「…ただいま」
帰ってきた慶太郎を迎えたのは
今にも泣き出しそうな母親だった
「慶太郎、今すぐ病院に…」
「…どうしたん?」
母はその場に崩れた。
「…達也が…達也が…
事故…で…」
「…え…?」
慶太郎の頭は真っ白になった
達也はたまたま
昼間から酒を飲んで
ふらふら歩いている父親を
見かけたらしい。
かなり酔っていたらしい。
その父親はそのまま
道路に飛び出た。
そこへタイミング悪くやって来た
トラック。
その様子を見た達也は
迷わず飛び出したそうだ。
父親は無傷だった。
でも、彼を助けた達也が
その目を開けることは
もう二度とない。
達也は亡くなった。
慶太郎の母は
あんな人を助けなければ
良かったのにと
眠る達也に泣きながら
言った。
「あんなんでも
父親やから」
いつだったか
そんなことを言ってたなと
慶太郎は達也の笑顔を
思い出していた