やっとの思いで顔をあげ、
声を限りに叫んだ。
「先輩!!先輩!!許してください!!
もう晃輝先輩には近付きません!
だから許して・・・。」
途端に、先輩の力が緩む。
先輩の顔を見ると、いつもの優しい笑顔が浮かんでいた。
「そう・・。
やっぱり紅璃は可愛い後輩だね。
じゃ、晃輝先輩と私のこと、応援してね。」
「は、はい・・・。」
「じゃ、気を付けて帰って。」
そう言い残すと先輩はくるりと後ろを向いて、
帰ってしまった。
寒さと恐怖で震えが止まらない。
家は近くなのに、帰れない。
こんな姿親に見られたら、絶対何があったか
聞かれるに決まってる。
全部親に話せるわけない。
涙が出てくる。
気候はみぞれが混じっていきた。
寒さはなお更私を襲う。
「あ、紅璃・・・?」
誰・・・?
怪訝そうな顔で声の主を見ると、
そこには七海が立っていた。
「七海・・・。」
安心したせいか、涙がドッと溢れる。
「紅璃、どうしたの!?」
七海は私を抱きしめてくれた。
「さ、立って!こんなところで尻餅ついてたら風邪引いちゃう!」
七海は私の体を起こす。
「さ、ウチんちに来なよ。あったかいから。」
今日は七海の家に泊まることにした。
親には七海が上手く説明してくれた。
こんなとき、機転が利く七海には本当に憧れる。
七海は私に、ホットココアと毛布を用意してくれた。
「でさ、何があったの?晃輝先輩が何かしたの?」
少し怒った口調しなった七海。
「ううん、違うの。あのね・・・。」
私は洗いざらい全てを話した。