いつぞや目にした、なまめかしい脚に、肉感的な曲線を描く体………
白き者。
光の一翼。
レミエル。
「下郎が…時間を歪めてまで…貴様、目的を言えっ!」
レミエルの目の前に、フードを目深に被った、人かどうかも分からぬ者。
おそらく、この者が『魂喰い』…で間違いないのだろう。
フードの者は、フードの暗がりから見える口をにやりと笑わせた。
「…聞かれて、言うと思うか?」
「…だろうな。どちらにしろ、刻を歪めるのは禁忌だ。裁いてやる」
「ふっ…恐い恐い」
レミエルを茶化すように、フードを被った者はマントコートから腕を出した。
それは、まるで悪魔を思わせるいびつな腕。
指は鋭く長く、闇をまとっていて、はっきりとした定形を持っていない。
今にも空間と同化しそうな腕だ。
「塵芥にしてやるっ!」
レミエルが『魂喰い』に肉迫した。その美しい脚で『魂喰い』を蹴り飛ばし、追走する。
いつの間にか、手にはあの時と同じ槍が握られている。
「フハハハッ…いいねぇ。力強い魂を感じる…流石は神の御使い、って所か」
『魂喰い』は子供をあやすように、槍を手で払いながらレミエルの動きに合わせ、下がり、前進する。
「な、何!?一体何が……」
戸惑い、錯乱するレミーシュに、音もなくゼルが近付く。
「ゼ…ゼル……」
「ここは危険だ。事情はまた話す」
問答無用でレミーシュを抱きかかえ、尋常ならざる速さで離脱する。
「…ぅわああぁぁっ!」
その速さにレミーシュの口から悲鳴が上がる。
それとは入れ違いに、ゼルの頭上を、キアが尋常ならざる跳躍で飛び越す。
「…予定は大幅に狂ったが、まあ結果オーライってとこだねぇ」
キアを殿りに、三人はその場を離脱。
キアは様子見のために広場に残り、ゼルはレミーシュを連れて安全圏と思われる辺りまで退避する。
無人の、細い崩れかけた路地を駆け抜け、レミーシュを路地裏まで連れていく。
まだ、剣劇に似た、力同士がぶつかる音を体が感じとれる距離だ。
抱き抱えたレミーシュの体は、小動物のように小刻みに震えていた。