携帯は自分を誇示するかのように鳴り響く。一人の追っ手がハッと気付き携帯を取り、うわずった声で電話にでた。
[追っ手]「は、ハイッ!」
電話からは艶やかで悩ましげな、妖艶さ漂う女性の声が囁いてくる。
[女性]「どうぅ?、例のモノは手にはいって?」
[追っ手]「そッ、それが…予想外な事に、例のモノを運んでいるのがアノ“破棄者”でして…」
と、弁解を計ろうとすると、今度はさっきとは別の、透き通る様に澄んだ元気のよい女の子の声がこだましてきた。
[女の子]「おねえさま〜。しっぱいだって〜☆」
[女性]「あらぁ、そうぅ、困ったわねぇ」
電話の向こうではコッチとは場違いな程和やかな雰囲気を伝えてくる。
[追っ手]「時雨様!、まだ失敗したわけではございません!春雨様!この命代えてでも必ず!…」
[春雨]「えぇ、期待してるわぁ、一応コチラからも増援を送っておきましたからぁ…」
[時雨]「それまでやられちゃだめだよ☆じゃあね〜★」(ブツッ)
ツー、ツー、ツ…――――
[男]「おぉう!?」
隙を突いて折り返し、そのまま引き離そうとした時、追っ手達がまた撃ってき始めた。本当に後が無いみたいに。
[男]「手負いの獣がなんとやら、ッてヤツかい?」
どうにか引き離そうとするが弾を避けながら運転しているためか徐々に差を縮められていく。むしろ、当てに行くつもりなのかスピードをどんどん増している。
[男]「おいおい、今時カミカゼなんて真似………おわッ!?」
問答無用でぶつけられた。後ろから衝撃が直に響いてくる。
[男]「…ッ!クソが!調子にィッッ!?」
今度は横から一斉掃射を喰らった。窓ガラスが割れ、サイドミラーが吹き飛び、タイヤを撃ち抜かれ、スリップして近くの街路樹に突っ込んだ。そこえさらに運転座席目掛けて銃を乱射する。
[追っ手]「やめろー!例のモノに当たったらどうする!!」
一人の追っ手が止めに入ってやっと銃撃がやんだ。辺りに硝煙の匂いが立ち込める。追っ手達は車から降りて銃を構えながら用心深く蜂の巣になった車に近付いていった。口の端から笑みがこぼれる。[追っ手]「ハッ…ハハハッ破棄者もそんなに大した事無かったな。コレでやっと…」
[男]「何だ?コレでやっと諦めてくれるのか?」
[追っ手]「!?」
後ろを振り向いた時には自分達の車が蹴り上げられ宙を舞っていた。
…続く