君に捧ぐ 〜20〜

k-j  2009-11-18投稿
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「昨日援交してきた」
君はそう言って僕に万札を見せた。
 僕はその当時、女性経験も浅く女の人について何も知らなかった。
 女の人にとって援交というのは身近なことなのか。
 どれくらいの人がやっているのか。
 想像するしかなかった。
 僕の中では、援交などというものは女の子のほんの一握りしかやっていないと思っていた。
 しかし、同時にその一握りの女の子の中には、本当に信じられないが、小学生までもいるということを事実として受け止めていた。
 付き合い始め、君から援交したことがあると言われたとき、かなりショックを受けたが疑うことはなかった。
 わざわざ自分の印象を悪くするような嘘はつかないだろう。
 そう思っていた。
 だから君に援交してきたと言われたときも信じられない気持ちはあったが、疑わなかった。


 それまで感じたことのない感情だった。
 驚き、怒り、憎しみ、そして悲しみ――。
 自分の中にある負の感情をすべて混ぜ、体内で煮立てているような。
 僕の体の隅々までドロドロのそれが行き渡っていく。
 体が震え出した。
 震えを止めようと体に力を入れたが全く止まらない。
「…なんで…なんでそんなことを…?」

 お金が欲しかったの。

 僕は目の前に置かれた一万円札を見た。
 こんなものの為に…?
 僕はその時人生で一番汚れたものを見たと感じた。
「俺が今どんな気持ちかわかるか…?」
「……」
「相手は誰だ…?」
「…知らないおっさん」
「今からそいつを殺しに行く。連絡先を教えろ」
「知らない」
 ――限界だった。
「知らねぇじゃねぇだろうが! 会ったんだろうが!? ああ!?」
 君は僕の声に驚き、怯えながら言った。
「…掲示板で知り合って待ち合わせしたから…本当に知らないの…」
 下を向き、泣きながら震える声を出した。
 そのときは君の怯えている姿も、君の涙も何も感じなかった。むしろ僕を余計に苛立たせた。
 汚れている。
 君をそうとしか感じなかった。
「お前は自分が何をしたかわかってるのか…?」
「……」
「そんなにこれが欲しかったか。どうだ、手に入って嬉しいか?」
「……」
「黙ってねぇでなんとか言えや!」
 君は泣いているだけだった。

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