菜々は、ドレス姿で、落としたと思われる通りで、必死にクマのキーホルダーを探していた。
「ないわ…」
諦めかけていた時、
「あの…探してる物って、これですか?」
「えっ…。」
後ろを振り返ると、クマのキーホルダーを持った男の人がいた。
顔立ち、髪型も整ってはいたが、服装はみすぼらしく、全体が薄汚れていた。
「あっ…ありがとうございます。」
「いえいえ。良かったです。ちゃんと渡せて。」
「あの…お名前は?」
「あっ…オレは、東原走太。…あなたは?」
「私は、遠藤菜々と申します。…よろしかったらお礼に、食事でもどうですか?」
その選択は、走太にとって、『はい、喜んで。』しかなかった。
走太は、今日何も食べていないのだ。
「はい、喜んで。」
走太は、ぶっちゃけ、菜々に一目惚れしてしまった。恋って、こういう事なんだって、わかった。
一方菜々は、これはいけない恋だと分かっていた。
『将来は金持ちと結婚しなさい。』
これが、遠藤家のルール。全ては金のためのルールだ。
走太の優しさに少し惚れた。
でも、結ばれてはいけない恋だった。