「…大丈夫か」
ゼルは、出来るだけ優しく、レミーシュをその場に降ろした。
「へっ…平気…いつもの事だからっ…」
下唇を震わせるレミーシュ。
…いつも、死という、人間への危険と隣り合わせでなくてはならない立場に、ゼルは分からないながらも同情した。
「ゼル…あんたも、リーダーも、……あの羽根付き女も…一体何者なの……!?」
レミーシュは、意外にも魂喰いより先にゼル達に矛先を向ける。
「絶対おかしいよ…普通じゃない…」
レミーシュは首を横に振り続け、自らの肩を抱く。
「あんた達も…あのフードの人と同じで……私をハメようとしてるの!?」
「…今話しても、正確にお前の耳には届くまい」
レミーシュは、魂喰いが人外だとは認識しているようだ。
すなわち、魂喰いが何かそれと分かる説明をしたか…。
「…奴は、何をお前に話した?」
「…知らないよ…」
レミーシュは半分自暴状態のようだ。
『力』を持ってして尋問してもいい……が、ゼルは躊躇した。
もはや、レミーシュに感情を傾けない事など、できなかったのだ。
外見的特徴だけで無条件に自分を慕い、リスクの高い仕事をさせ、
そして、半ば騙した。
ただの哀れみとも言えぬ、もっと深い空虚さがゼルにあった。
「すまない」
思わず、そんな言葉が口をついた。
レミーシュはその場にうずくまり、返事すらしない。
相当混乱しているように見受けられた。
ゼルはレミーシュをただ傍観するしかできない。
…と。
「ここにいたか。計算はまだまだ狂いを止めていないよ」
キアが音もなく現れた。うずくまるレミーシュに一瞥し、すぐゼルへ向き直る。
「…光のパシリが……押されてる」
「…馬鹿な」
「それほどまでにヤツは強いのか…それとも、カラクリがあるのか…」
「……援護するしかないな」
「光のパシリとかぃ?どんだけキミは仕事熱心なんだ…」
キアは呆れ顔で苦笑しながらも、背中から蛮刀サイズほどの蒼く煙るナイフを出した。
「まぁ…あんな奴のさばらせるのは確かに面白くないよね。
…月のパシリも一枚噛ませてもらうよ?」