結衣子は、いわゆる天才はだの子どもだった。
理解力、応用力、美貌、人格など、こうした才能の類い総てを、生まれながら備えていた。
反して、母親の貞子は、どこで、どう、生まれ損なったのか…。 美貌に恵まれないのに、関心の行き着くところは異性との交渉であり、高貴な血筋と学歴を持ちながら、下衆な女だった。
結衣子が生まれた当初は、我が子自慢が楽しみであったところが、年齢にそぐわない、結衣子の才能や、愛されることに対して、こともあろうに、日増しに敵対心を燃やしていくような哀れな女でもあった。
おそらく、結衣子を目のなかに入れても痛くないほど可愛がる伴侶に強く嫉妬する日々を送っていたのだろう。
第二子の房子が自らの性格を受け継いだ時には、おそらく、一軒の家の中で、同士を見つけた思いであったろう。
こうして、人格破壊にならざるを得ないペアが誕生したわけである。
人は、1人では、自分の性格を作れない。