子供のセカイ。100

アンヌ  2009-11-20投稿
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食事を終えた後も議論は続き、王子の問診に来た医者をきっかけに、その場はお開きとなった。とりあえず結論は保留になったのだった。
とは言っても、耕太の言う『道』に極端な警戒心を抱いているのはジーナだけだった。ホシゾラは少し不安そうだったが、美香は耕太の言葉を信じたし、王子は他に道がないのならと、妥協案にすがった。
しかしジーナは、そもそも耕太自体を信用していない様子だった。
話し合いが終わると同時にさっさと部屋を後にしたジーナの背中を、耕太はじっと見つめていた。


「――おい!」
ジーナは剣の稽古をしていた。ホシゾラから空き部屋を借り、鈍ってしまった体を鍛え直すために、ひたすら剣を振っては数を数えていた。
「……221、222!」
「おいってば!無視かよ?」
なおもしつこく入り口のところから話しかけてくる耕太に、ジーナはイラッとして剣を振る手を止めた。
「……何の用だ。」
わざと低い声を出したのに、耕太はもう慣れたとでも言うように素知らぬ顔だった。
「美香から聞いたぜ。あんた、剣、強いんだろ?」
「だったらなんだ。」
「試合しよう。」
「……は?」
耕太は了承も得ず、ずかずかと部屋の中に入り込んできて、ジーナの前に立った。
どこから持ってきたのか、耕太の手には細長い木の枝が握られていて、それを一振りすると、それはたちまち頑丈そうな剣に変わった。
(光の子供の力か。)
ジーナは首にかかった布で顔の汗を拭いながら、構えを取った耕太を品定めするように眺めた。……意外に良い構えをしている。耕太には隙がなかったし、じっと睨むようにジーナの顔から目線を反らさない様子から、彼の集中力の高さがうかがえた。十二歳の子供にしては上出来だ。“闇の小道”で戦っていた相手とやらに、鍛えられたのだろうか?
ジーナは胸がざわつくのを感じ、思わず口端をつりあげて笑った。
「――おもしろい。いいだろう。愚かにもこの私に戦いを挑んだこと、後悔させてやる。」
ジーナが首から抜き取った布をパシリと石壁に投げつけた音が、戦いの合図となった。
耕太は真っ直ぐに斬り込んできた。ジーナは避けずに、振り下ろされた剣を易々と受け止めた。
ガン!と金属音が響いて、火花が散る。ジーナは笑った。耕太も笑っていた。それからしばらく打ち合いが続き、当然のごとく耕太は負けた。



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