一台のタクシーが、建物の前で止まった。
「やっと着きましたね」
現場から警察所までかなり道のりがあった。
「・・・・・・・」
零は答えない。
「ゼロ?零さん?おーい」
零は俯いたままだ。
隼人は零がかなり車に酔っていることに気づいた。
「全く、困ったもんだ。」
隼人は、零を引きずり降ろすと、タクシーの代金を払った。
「す・・すい・・ません」
かなり顔色が悪い。
ちゃんと話せるまでもう少しかかりそうだ。
30分ほどすると、零はかなり元気になった。
「さ、行きましょうか隼人さん。」
「ええ、」
建物の前には大きな噴水があり、その辺りに、たくさんの報道陣が集まっていて、警備員が必死で
署内への侵入を阻止している。
なにかあったのだろうか
「これ、入れるんですか」
「心配はいりません。」
それだけ言うと、彼はその人ごみへ突っ込んで行った。
「ちょっと!!」
あんな人ごみへ、しかも、必死で情報を得ようとしている報道陣の中に突っ込んで行くことは、
自殺行為にほかならない
それは隼人がよく知っていた。
それでも、彼の助手である以上、追いかけるしかない。
「しょうがないか・・」
隼人は死を覚悟して人ごみへ突っ込んで行った。