「慶太っ!加藤がお前のこと…!
呼び出し、それやったんやろ?!」
帰ってきた慶太郎を待っていたのは
慶太郎とは逆に
慌てて大騒ぎしている猛だった。
「うん」
慶太郎はいつも通り
自分の席についた。
騒がしい猛の声で
周りの視線が慶太郎に集まる
「“うん”ちゃうやろ!
お前もちろん、否定したんやろ?」
「ううん」
「ううん?!
なんで?!」
「なんでって…
…めんどくさい…から?」
慶太郎はまるで
解けない問題を解こうとする
小学生のような難しい顔で
答えた。
「なんでやねんー
お前は…ほんまに…」
猛は力なく言った。
「で?…どうなったん?」
「辞めるねん」
「辞める?!なんで?!」
少しずつ離れていっていた
周りの視線がまた集中した。
「…めんどいから」
食い付く猛にいい加減
慶太郎もうっとうしそうに
返した。
「ええん?それで?」
心配そうな猛の顔を
慶太郎は椅子にもたれかかり
じっと見つめた。
やがて彼の口元が笑った。
「ええねん。
これでやっと
ドラムだけに集中できる。」