神のパシリ 36

ディナー  2009-11-22投稿
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「…素直に感謝しておこう」

ゼルは立ち上がり、大鎌を担ぎあげた。

「ここで待っていろ」

ゼルの言葉に、レミーシュは目も向けず、返答もしなかった。





ゼルとキア。

二人の小間使いが疾走し、いびつな闘技場と化した中央広場へ舞い戻る。

フードの者…もはや『魂喰い』でいいだろう。
魂喰いは光を組み敷き、それを眼下に深い闇の中から笑みを見せていた。

「…は、離せ下郎がっ…!」

「やべぇ、めちゃいい匂いすんじゃんお前…光の、甘くて白い…たまんない匂いだ…」

魂喰いの口からは、獣のように唾液がしたたり、ふくよかなレミエルの胸を濡らす。

「ちっ、ここで彼女がやられるとまずいよ。光のパシリを失ったら…また神々による戦火が灯るかも…」

キアの言葉の終わりを待たずして、ゼルは大鎌を頭上で水平に振り回して遠心力をつける。

をおおぉぉ…と、罪人が呻くような音を鎌が作り出す。

それの音に、魂喰いがゼルを視界に入れた瞬間。

キィィィ……ッッンッ。

肉を断つのとは異なる音。

鎌は水平に振られ、魂喰いの胸部を真横に切断する。

「…魂を切る音だ。貴様の魂を両断した。

…冥土へ墜ちろ」

回路を失った胸部より下半身が、力なくレミエルにのしかかり、刹那の後に灰塵と化す。











だが。

「…ほぅ。まじウケる手品だなぁ」

上半身は、レミエルを組み敷いたまま喋り続ける。

「……!!?」

常に冷静なゼルに白波がたった。

「あーあ…体こんなんじゃ何もできないし。

んじゃ、コイツをいただくよ。

…ついでに、パシリの魂もなァ」

ゼルが第二撃を加える前に、魂喰いはレミエルの柔らかな胸に顔をうずめた。




顔が、乳房に深く沈んでいく。
まるで皮膚を突き抜け、その中に入っていくように。

「…ぅぁあああああああああああああああああああ」
声というより、音に近い、光のパシリの悲鳴。

血も何も、破壊に繋がるものは何もない。

だが、魂の燭が揺らぐのを感じた。

神の小間使いの命を脅かす存在に、ゼルは戦慄した。



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