魔女の食卓 31

矢口 沙緒  2009-11-22投稿
閲覧数[376] 良い投票[0] 悪い投票[0]



「専務が想像している以上に、彼女は専務を驚かせるはずです」
「おっ!
来た来た!
スープが来た!」
そう言った藤本は、すでにスプーンを手につかんでいた。


石崎武志と藤本は、食後のコーヒーを飲みながら、今出された料理について語り合っていた。
特に藤本はすっかりご機嫌で、
『こんなにうまい物は食べた事がない』
を何度も繰り返していた。
厨房から出てきた川島美千子が、ほかのテーブルの椅子を引き寄せ、二人の座っているテーブルの横に座った。
藤本は彼女を見ると、ペコリと頭を下げた。
「川島さんとおっしゃったかな。
さっきは失礼な態度をとって済まなかった。
しかし正直驚いたな。
あなたの作った料理に比べたら、この前の店の料理なんか、ただの食糧としか思えん」
「専務さんに喜んでいただければ、私も嬉しいです」
「喜ぶなんて、そんなもんじゃない。
感動しとるよ。
料理の腕もすごいが、あのワインの選択にも感服した。
特にあの魚料理の時。
魚料理に赤ワインをもってくるとは。
しかも、それが絶妙なんだ。
いや、本当に恐れ入った」
「誉めていただいて嬉しいわ。
実はあの魚料理には、最初から赤ワインしか合わないんです。
よく
『魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワイン』
って言うじゃありませんか。
でも、それは正式には間違いなんです。
正式には
『白ワインを使って作った料理には白ワイン、赤ワインを使って作った料理には赤ワイン』
が正解なんです。
つまり、料理に使ったワインと飲むワインを合わせるわけです。
ただ、一般的には魚料理には白ワインを使い、肉料理には赤ワインを使うから
『魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワイン』
が法則的に当てはまってしまうんです。
でも、今夜の料理のように、例外的に魚料理に赤ワインを使う事も希にあります。
特にクセの強い魚や、油分の多い魚の場合は、白ワインではちょっと弱いんです。
赤ワインの力強さを使って、初めて料理としてのバランスがとれるんです。
そんな時には、やはり飲むワインも赤ワインを合わせたほうが、いい結果が生まれるんです。
逆に肉料理にも白ワインを使う事がありますよ。
ごく淡白な肉の場合、赤ワインを使うと肉の持ち味が抑え込まれてしまうんです。
だから、白ワインを使って、その淡白な味を引き立ててあげるんです」

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 矢口 沙緒 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ