「貴様、一体…!」
ゼルが言い終わるより早く、魂喰いの上半身は灰塵となって、湿っぽいロロの風に舞い散った。
レミエルが、その躯をゆっくり起こす。
もはや、それは光のパシリではなかった。
「これが光のパシリか。エロい体してるなァ」
レミエルはそう言って、自らの胸を揉みしだく。
「…どれ…」
『レミエルだった者』は、絹のように滑らかな掌をゼルに向けた。
ゴンッッッ。
重厚な鈍器で殴られたような衝撃。
ゼルの体が風に舞う紙切れのように宙を舞い、煉瓦を破壊して地面に叩きつけられる。
「…がっ…ハァッ!」
「…ふーん、まぁこんなモンか」
レミエルが………
否、
魂喰いが、美しい唇を笑わせる。
「こいつの躯も、魂も戴いた。…やっぱりパシリの魂は段違いだな」
「なん…だと…」
「…目的は何だい」
いつの間にか、キアがゼルの傍らに立っている。
「…魂だよ。魂喰らってんの。それが、世界の、何よりの『力』だからサ。
オレはな、強さが欲しいんだよ。
でさ、世界のルールを変えてやるんだ。
オレの世界を創るためにな。
神なんて、どんな神だろうと
クソ喰らえ、だ」
「ふざけた野郎だ…。何もかも、『存在』を創り出したのは神だ。神に弓を引いても、秩序を変えたとしても、それは貴様自身の『存在』も無くなる事を意味する…」
「それが気に喰わねーんだよ。創り出した?ノボせやがって。オレはな、神も、世界もクソ喰らえなんだよ。神の『存在』なんか消して、縛りだらけの世界とはオサラバさ。俺がこの世界の新しい主になってやる。」
「…一理ある事は認めよう。だが、貴様を好きにさせるのは不快だ」
ゼルは大鎌を左腕で頭上へ上げ、振り回した。
「…今日は満月だぞ?お前が死のパシリで、月に弱い事知ってんだよ」
「…口の減らない奴だ」
ゼルの瞳に、怒気が灯った。