――「今日は珍しく
早いねんなあ」
息をきらしながら光希は
いつもの場所に足を踏み入れた。
慶太郎は顔をあげ
光希を見たが
また独り、スティックを
ぽんぽんと投げて回し始めた。
「…走ってきたん?」
慶太郎の向かい側のパイプ椅子に
光希が座ると慶太郎は
スティックから目を離さずに
聞いた
「学校終わった瞬間、
あんたすぐに
おらんくなんねんもん。
ミーティングまた
忘れてんのかと思って。
自転車ないから
走って追いかけてきた。
あっつぅー」
光希は手の平で自分を仰ぎ
全く自分に興味がなさそうな
慶太郎の顔を横目で
ちらっと見た
「…達也くんの話、
昨日聞いた
加藤って奴の話も」
慶太郎はスティックを
投げる手を止めた。
しばらく二人は互いに
何も言わなかった。
やがて先に口を開いたのは
慶太郎だった
「…昨日、悔しくないんとか
聞いてきたやん?
言い返さんのとか…
ほんまにどうでも良かってん。
あいつが何言っても。」
慶太郎の話に
光希も真剣に耳を傾けた。