「なんで…ここにおるん…?」
やっとのことででた言葉は
本当に小さな声だった。
「真央に会いに来た。」
和樹は悪戯に微笑んで
答えてくれた。
「…嘘つけ、あほ」
言いたいことはいっぱいあるのに
何も言葉にならない
「ほんまやって」
和樹はやっぱり笑って
そう言った。
からかう和樹にあたしが怒った時
いつも見せた笑顔だった。
「……」
懐かしくなってあたしの声は
また出なくなる。
「なあ、真央
今ひま?」
「え…うん、まあ…」
「じゃあ、行こう」
「…え?」
「自転車貸して。
俺が連れてくから」
あたしは言われるまま
和樹に自転車を譲った。
和樹は自転車にまたがると
あたしに後ろに乗るように
うながした。
「はやく」
「…うん」
あたしは和樹の後ろに乗る。
「行くで」
あたしは和樹の背中に
ぴったりくっついた。
痩せたように思ったけど
やっぱり和樹の背中は
あたしには温かく広かった。