両腕も拘束され、動けないタクトの前で、傀儡はイエルの時と同じように剣を形作っていく。
そして、傀儡の手の中で剣が完成した時、タクトは信じがたいものを傀儡の背後に認めた。
「最後に言い残すことはありますか?」
「それは・・・こっちの台詞だ!」
傀儡は目を細め、タクトの見ている自分の背後を振り返った。
「よぉ」
その人物は振りかざされた大きな剣を振り下ろした。
剣は傀儡の体を深く斬りつけた。
「あ、貴方は!そんな・・・わ、たし・・・は・・・」
傀儡はその場に崩れ落ち、砂になった。
「意外とあっさり終わっちまったなぁ」
タクトの鎖が砕けた。
「死闘を繰り広げるよりましさ。そんなことより、どうしてここに?シルヴァ」
シルヴァは大きな笑い声を上げた。
「ばーか、敵を欺くにはまず味方からだ」
タクトは頭を傾げた。
その様子を見てシルヴァは鼻で笑った。
「俺の生まれつきの力」
そう言ってシルヴァは剣で自らの心臓を突き刺した。
「シルヴァ!」
「夢でも見てるのか?タクト」
気が付くとシルヴァは平然と立っていた。
「あれ?」
「幻覚だ」
シルヴァが自慢気に胸を張った。
「幻覚?」
「そう。俺は厳しい条件下限定でだが、他人様に幻覚を見せることができるんだ」
「それじゃあ、イエルも!」
シルヴァの表情は沈んだ。
「いいや、仲間達とイエルは・・・」
「・・・ごめん」
タクトは下を向いた。
「でも、他にも俺達のアジトはあるんだ。その仲間達でエンシェントロックを再興するんだ!」
「おーい、タクト」
ウェドが走ってきた。
ウェドと一緒にパールを救出したあとで二人に全てを話した。
「じゃあ、傀儡も倒したし、フラットを探しましょう」
「あの魔導師なら出口の近くで寝てた」
シルヴァはぽつりと呟いてから「それじゃあ、俺は気が済んだから」と歩いてタクト達のトロッコに乗って来た道を帰っていった。
タクト達は出口のすぐ目の前で倒れていたフラットを見つけ、ウェドが担ぐと出口を出た。
「二人ともボロボロだな」
ウェドは傷だらけでボロボロのタクトとパールを見て笑い出した。
「ウェドに言われたくないのよ!」
「ウェドもボロボロじゃないか!」
「あのな、俺はな・・・」
三人の仲の良い言い合いは続いた。