君に捧ぐ 〜21〜

k-j  2009-11-23投稿
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 僕は万札を手に取った。
「こんなもの…」
「返して!」
 君は必死に取り返そうとした。
「うるせぇ! こんな汚れたものなんか…」
 人生で初めてお金を破った。
 しかし気分は全く晴れない。
「なんてことすんの!」
 君のその態度にまた苛立った僕は、君に細切れの札を投げつけた。
「そんなに大事なら返してやるよ」
 君は怯え、そして悲しそうだった。
「……ったの」
 君は下を向いたまま呟いた。
「ああ? 聞こえねぇよ」
「全部嘘だったの! 援交なんて一度もやったことない!」
「な…嘘つくなよ! あんだけ色々言ってたじゃねぇかよ!」
「嫉妬してほしかったの!」
「だからってそんな嘘つかねぇだろ! 騙されねぇぞ!」
「本当に全部嘘だったの! 前に言ったでしょ!? 私虚言癖があるの!」
「きょ…なんだって?」
 僕は一瞬にして怒りを忘れてしまった。
 虚言癖――。
 確かに君は以前そんなことを言っていた。
 気を引こうとして大げさに言ったり嘘をつくことがあると。
「…今回もその虚言てやつって言いたいのか?」
「…うん」
「じゃあこの金はなんなんだ?」
「たまたまおばあちゃんに貰ったの…」
「信じられると思うか? 援交してきたってずっと聞かされてたんだぜ?」
 君は暫く黙っていたが、うつむきながら、
「証拠になるかわからないけど…。最初にしたとき私凄く痛がってたでしょ?」
「…ああ」
「私あのときが初めてだったの」
「…は?」
「多分暗くてわかんなかったんだろうけど、血も出てたんだよ…?」
 君を見た。うつむいているが、嘘をついてるようには見えなかった。
「でもだって、もうかなり慣れてるって…」
「だからそれも全部嘘なの。強がってたの…」
 消え入りそうな声で言った。
 僕は君を信じようと決めた。
 決めたら涙が出てきた。
 どうしょうもなく溢れてきた。
「どうしたの…?」
 君は心配そうに聞いてきた。
 僕は首を振ることしか出来なかった。
 嬉しかったのだ。君が援交をしていなくて本当に嬉しかったのだ。
 体の中のドロドロが消えていく。
 君を見た。
 目が合った。
 君の瞳は涙で濡れていてとても綺麗だった。

 二人ともあることに気付いた。

「お金どうしよう…」



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