眼が合った。
虚無なのかもしれないが、確かにそう感じた。
闇色をした全身。さらにその体からドス黒い霧のようなものが発散されている。
幻覚でも見せられているのだろうか、先ほどから視野が狭く感じる。
いったいもうどれだけ戦っているのだろうか、ヒューラはすでに定かではない。
ただ確信していることがある。仲間がすでに皆殺しにされている。ヒューラの足元には、今朝まで自分を小突いてた右腕が転がっていた。
「…………」
無音。
朦朧とする頭でヒューラは考えた。
十人からいた仲間たち。
そのすべてが、若いヒューラとユウナを守るため、盾になって倒れていった。
そして今、ヒューラを庇った少女が血の海に沈んだ。
街を救うために立ち上がった組織の中で出会い、街に平和が訪れた後のことまで語り合い、約束した少女。
影に迫られたヒューラの前に立ち塞がり、一撃を受け、散った。
「…………」
声すら出なかった。叫ぶことさえできない。
絶望の淵で、ヒューラは己の最期を悟った。ゆっくりと、一歩ずつ近づいてくる死。
あの影が何物なのかさえも分からないまま、殺されるのか。
あと五歩。
手にしていた剣はへし折れていた。
あと四歩。
立ち上がろうにも、下半身に力が入らない。
あと三歩。
もう見上げれば、そこにある影。
あと二歩。
闇色の腕が伸びてくる。
あと一歩。
東側の窓から、光が射してきた。
朝日が部屋の惨状を照らし始めた。
夜明け。
ただ一人、ヒューラは生き延びた。そして、目前の光景に耐え切れず、絶叫した。