『何がおかしいのヨ、森宮サンよ?!』
京谷さんが、透かさず問い掛ける。
『いやぁ‥‥参った。参ったよ、君達には。
私も、ここは、ひとつ大人になろうじゃないか。
そもそも君達は一体、何が目的なのかね?!金か?!名誉か?!』
森宮の父親は、そう言いながら、
ゆっくりと立ち上がり、
今、ここにいる者、一人一人の顔を確かめる様に、
静かに視線を移動させた。
『俺達の心を突き動かしたのは、金や名誉じゃねぇよ。
ただ、真実を曲げようとする、汚ねェ大人のやり方に、
黙っちゃいられなかっただけヨ。
それだけが理由じゃ、納得いかねぇか?!森宮サンよ?!』
京谷さんの言葉に、
森宮の父親は、眉間にピクリとシワを寄せた。
『ば、ばかなっっ。
そんな、くだらない理由で‥‥私にこんな小細工を仕掛けるとは‥‥。
京谷クンに北岡クン。
私は、これから息子と2人で、
法の裁きを受けるコトになるのだろうか‥‥。』
一言一言、噛み締める様に発せられた森宮の父親の言葉に、
さっきまでの勢いは、全く感じられなくて――
『さっきも言っただろう。
テメェらをブタ箱に入れさせるつもりなら、
こんな回りくどいコトはしねぇよ。
聖人に感謝しろとな。』
そういい終わると、
京谷さんは、さげすんだ目つきで、
その男を見つめていた――
そして、
その男の足元にうずくまっている森宮に、
今度は聖人が、一言こう付け加えたんだ――
『まずは、テメェに心身共々、傷付けられた人間、一人一人に詫びるコトだ。
もちろんコイツにもな――』
あたしに視線を向け、
そう言ってくれた聖人――
森宮 ヒロキは、
あたしに向かって謝罪した――
『木下さん。
君に対して、侮辱する様なコト言ってゴメン‥‥。』
思いがけない森宮の言葉に――
複雑な心境で――
あたしは、
すぐに言葉が出て来なかった――