一夜の色街―\r
街は夜だというのに活気に溢れ、あちらこちらで人々の声がこだましあう。木枯らしは冬にはそぐわない花たちの香りを運び、私の鼻を擽る。店先の遊女たちは私に手招きする。私はそれには見向きもしない。
「・・・・・」
私は店の前で足を止める。三階建ての個人まりとした佇い。建物の大きさにそぐわない程の大きな看板。
店の名―輪廻―\r
「あら、お侍さん!」
二十四、五歳程の女が私に気付き、甲高い声を上げる。
彼女は私に近くなり、体を寄り添わせる。梅の花の香りを漂わせて
「今日はどういったご用件で?」