慶太郎の自転車に乗せられ
着いたのはいつもの公園。
光希はさっさと歩く慶太郎に
遅れないように足を動かした。
「どこ行くん?
てかミーティング…」
光希は慶太郎の向かう先を見て
気付いた。
「置いてくで?」
慶太郎は立ち止まる光希に
声をかけ
バスケットコートにいる
男子学生に近寄っていった。
光希も慌てて後を追った。
加藤はまた独り、
練習をしていた。
「加藤」
慶太郎は少し離れた所から
声をかけた。
「なんや、また来たんかよ」
加藤はそう言って
額の汗を拭った。
「俺、ドラムは辞めへんから」
「は?」
「それだけ言いに来た。」
慶太郎は加藤に背を向けて
来た道を戻り始め
つっ立っていた光希の
腕をひいた。
「どうせお前は
何かあったら簡単に
辞めてしまえるんやろ?」
二人の後を加藤の声が追った。
振り返った慶太郎の
口元が笑う。
「そのうち嫌でも
お前の耳に届くわ。
俺が自信を持ってやってる音が」
光希は手をひかれたまま
慶太郎を見つめていた。
「やっぱ簡単には伝わらんやろな。
…でも、ええねん。
いつか知ってもらえれば。」
光希の目には慶太郎の
まっすぐな瞳が映った