シャープとドローは牢に入れられてしまっていた。
「ちくしょー、わりぃ、玉座の間には行けそうにない」
ドローが頭を垂れている。
「いいわよ、別に、命があるだけでも・・・」
それだけ言うとシャープは少女の隣に座った。
少女は、体育座りでぴったりと膝に顔を押し当てて、泣いているように見えた。
「綺麗な服だな。お前、フィールって奴じゃないな。王族の者だろ?」
いつの間にかドローが無造作に少女の横に座っていた。
確かに、少女の服装はとても庶民のものとは思えないほど綺麗なものだった。
「名前は何ていうんですか?」
王族の者が牢に入れられていることは気にかかるが、シャープはまずは名前を聞くことから始めた。
「・・・チェロと申します」
少女は涙を拭いながら顔を上げた。
「チェロ!」
シャープとドローは同時に声を上げた。
「チェロって、まさか、王位継承第二位の!」
「失礼しました!わたしは魔導師の村から来たシャープと申します」
シャープは反射的に膝まづき、ドローにもそう促した。
「やめて下さい」
チェロの顔立ちは綺麗に整っており、上品でどこか悲し気な口調でシャープに頭をあげさせた。
「お前があの噂の姫君のチェロか!すげぇ!本当に綺麗な顔だなー」
ドローは珍しい物でも見るように顔を覗き込んだ。
シャープはその態度を見て凍りついた。
「ドロー!」
シャープはドローの両足を凍りつかせると大袈裟にチェロをドローの遠くへ避難させた。
「なにすんだよ!冷てぇ!」
「あなたはそこでその中身の無い頭でも冷やしてなさい」
鼻で笑うと、シャープは「大丈夫でしたか?」ととても心配そうにチェロに声をかけた。
「ふふふ、仲が良いんですね」
ふっくらとした笑い声でシャープに答えた。
「あれは詐欺師なんですよ。気をつけて下さい」
シャープがチェロの耳元でヒソヒソと話している間にも、ドローは頭じゃなくて足が冷えるだの、俺は詐欺師じゃなくてスリ師だのと喚き続けていた。
「うるさいなぁ!」
シャープがドローを見て怒鳴りつけた。
「シャープさん・・・」
ふとチェロに目を戻すとそのよく手入れされた白い手の中には、真っ赤な血の色をした球状の宝石が握られていた。
「これは・・・危険な石なのです」
チェロは神妙な面持ちでシャープの目を見た。