手紙には、こう書かれていた。
『さようなら
あなたが本当に
愛したのは
私ではなく
私の料理たち
そして私も
私の料理たちも
あなたを幸せにする事さえ
出来ないの
短い日々でしたが
私には本当に楽しく
夢のような思い出が
いっぱいです
私はもう
おなかいっぱい』
彼女を捜さなくては!
僕には彼女が必要だ。
石崎武志は表に飛び出すと、車まで走った。
そして、車のドアに手をかけたところで、彼は止まった。
いったい、どこを捜せば…
見当さえつかない。
いったい、この広い世界中の、どこを捜せばいい。
何か手掛かりは…
彼女の行くあては…
彼は必死に考えた。
しかし、何もない。
何も思い付かない。
彼女の事を、何も知らない。
…そもそも、彼女は何者だったのか?
石崎武志は、その場にガックリと膝まづいた。