魔女の食卓 48

矢口 沙緒  2009-11-27投稿
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戸倉
「あんた知らないの?
あっちこっちで噂になってるわよ。
なりふりかまわず、興信所や探偵社を使って、捜しまくってるそうよ。
とっ捕まえて、文句のひとつも言わなくっちゃ、気が済まないでしょ、彼女だって」
朝倉
「でも、変じゃない。
今さら川島さんを捕まえて恨み言を言ったって、もう元に戻んないよ、何もかも。
それなのに、そんなに懸命に捜すかしら」
山口
「ねぇ、ちょっと。
さっきから気になってたんだけどさぁ。
あのカウンターの隅で飲んでるの、大西麗子じゃない?」
戸倉
「えっ?
どこどこ?
あっ、本当だ!
あんたねぇ、そういう事は、もっと早く言うもんだよ」
朝倉
「まずい!
聞かれたかなぁ」
山口
「大丈夫みたい。
さっきから下向いて、一人でチビチビ飲んでるもん」
戸倉
「だいぶ参ってるみたいね。
あのさっそうとした雰囲気が、まるでないじゃない」
朝倉
「彼女、今なにを考えてんのかなぁ?
なんでそんなに必死になって川島さんを捜すんだろ?」
山口
「よし!
あたし本人に聞いてくる」
戸倉
「ちょっと、よしなさいよ!」
朝倉
「馬鹿ねぇ、やめなよ!
…あら、行っちゃった」
戸倉
「本当に好奇心ばっかり先走っちゃって、怖い物なしなんだから」
朝倉
「でもさぁ、知りたいよね」
戸倉
「そりゃ、知りたいけどさぁ。
何も本人に直接聞かなくったって
…あっ、帰ってきた。
あれ?
なんだか首かしげてるよ」
朝倉
「ねぇ、聞いてきたの?」
山口
「うん、聞いたよ。
なんで川島さんの行方を捜してるんですか?
って」
戸倉
「そしたら?」
山口
「それがさぁ、変な事言うのよ」
朝倉
「変な事?
いったいなんて言ったの?」
山口
「あのね、あたしが
『今さら川島さんを捜し出して、どうするんですか?』
って聞いたらね。
そしたら彼女、自分の右手の甲をじっと見て、こう言ったのよ
『あのデミグラスソースを、せめてもう一度だけでも』
って」



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