今夜から、サーカスの一団が家の近くにテントを張る事になった。
団長があまりにも粘って日が暮れたのが、タナーおじさんが折れた理由だった。
「日が暮れたな。今追い返すなんてしたら、町に着くのは、人が寝静まる頃になるだろうな」
この一言で、サーカスの一団は救われたという。
イーディン・ローはとても喜んでいた。
「ありがとう!」
何もしていない僕にも礼を言った。
僕は止めてくれと頼んだが、どうしても言いたいと言って聞かなかった。
けれど、生まれて初めて感謝されるのは、逆に感謝したくなるくらい嬉しかった。
仕事が一通り終わり、僕とタナーおじさんは夕食を取っていた。
いつもタナーおじさんは、キリストとの関係が深まったかとか、キリストの調子はどうだとかの話しかしないが、今日はサーカスの一団の話をしていた。
「全く迷惑な連中だ。サーカスだか何だか知らんが、厄介事だ。特にライオンが一番厄介だ。どうしてだか分かるか?」
タナーおじさんはスプーンを僕に向けて聞いた。
「…動物達を食べるからですか?」
僕は考えついた事をそのまま言った。
タナーおじさんは首を横に振った。
「違う。動物達も大事だが、特に大事な…」
タナーおじさんは、僕に続きを言うよう目で促した。
僕にはもう答えが分かっていた。
「…キリスト。でも、何で?」
「ライオンがユニコーンの天敵だからだ。ユニコーンは虎にも象にも勝てる生き物だが、唯一ライオンには勝てない。だから、よく注意しろ。キリストは何が遭っても護れ!いいな?」
タナーおじさんはそう言ったが、何故ライオンがユニコーンの天敵なのか、僕には分からなかった。理由を聞こうとしたが、これ以上は図々しいと思った。
僕は、図々しくしちゃいけない立場だからだ。