真っ赤な絵の具と、オレンジ色の絵の具を、空一面に描き殴って、鮮やかな空が出来上がる。
明日は、晴れだよ。
と証を残して…
やがて、静かに夜のカーテンが、静かに幕を閉じる。
夕焼けの染まった空の下、バス停で時計を眺めては、溜め息をつく女性が一人。
年齢は30歳位の、痩せている品の良い化粧の似合う女性である。
「もう3台も、バスを見送ってしまったわ」
彼女は、同じ会社の女性の同僚と待ち合わせをしていたのだった。
約束の時間は、過ぎている。
そうだわ、携帯に電話してみようかしら。
「あっ、もしもし、おケイ、何してるのよ、遅いじゃない。」
文句の一言でも言わないとね、待たされてるんだし。
しかし彼女は、次の瞬間、言葉を失った。
「なんだぁ、陽子じゃないか、どうしたんだい、恵子なら、俺と出掛ける為に化粧中だよ、何か伝えとくかい。」
「…いっ、いえ、別にいいんです。」
慌てて電話を切ったが、何故私のフィアンセが、恵子の処に居るのか、頭の整理がつくまで時間が暫く掛った。
バス停を後にして、涙を溢さない様に、家路に向かう。
あんなに好きだった彼を諦めきれないし、結婚の約束迄していたのに。
夜のしじまをゆっくり歩いて行くと、家の前が騒がしい、涙を拭って近付くと。
彼と恵子が二人で家の前で待ってるではないか。
「驚かそうと思ってさ、恵子さんと組んで、悪戯したんだよ、さぁ今夜は僕の奢りだよ、何でも好きな物を食べに行こうよ」
笑顔で笑いながら、陽子は、彼に告げた。
「私、恵子に貴方との喧嘩の相談するつもりだったのよ。」
彼は笑い、恵子は
「私は、邪魔ね、じゃあ又会社でね。」
二人を後に帰って行く。
二人は天を見上げて笑った。
流れ星が尾を長く引いて流れて行った。
此れからの、二人の長い地獄の拘束された幸せを祝うかの様に。