彼女は奥の部屋に姿を消してしまった。
彼女はなかなか戻って来ない。私は店の玄関でただ佇むしかなかった。その間にも遊女たちは男を連れ店に入ってくる。遊女たちは決まって、花の香りを漂わせ、男たちはその香りに現を抜かす。
小さな声が私を呼ぶのにに気が付く。
「・・・お侍さん?
紅桜は逢いたくないそうです・・・」
「―そうか・・・
なら・・・・・・水城が来たと告げてくれないか・・・」
それを聞き、彼女はまた私の前から姿を消した。
私は暫く目をつぶり、呼吸を落ち着かせる
―瞑想―\r
どのくらい時間が経ったのだろうか。