Paramita―序章6―

新海 剛志  2009-11-28投稿
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「・・・あの・・・」
 梅の香りを漂わせ彼女が私の前に姿を現す。
「・・・どうぞ・・・紅桜は菊の間にいます。」
 私は彼女の言われるままに草履を脱ぎ店の奥に足を運ぶ。
 店内はいくつもの部屋に仕切られ、多くの遊女たちがごった返している。廊下は明かりが燈され、昼と見違えるほど明るい。

「こちらです。」
 彼女は階段を指差し私を見つめる。
 階段は勾配がきつく、そして暗い。遠い。
「この上ですか?」
 私がそう問い掛けると彼女はコクりと頷く。
 店の二階は一階とは打って変わり静まりかえっている。人っ子一人姿を見せない。



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