暗く長い階段も終わりを告げ、私は三階に辿り着く。
すべて明かりは消され、心なしか肌寒い。
私たちは菊の華の絵の描かれた襖の前で立ち止まる。
「ここです。どうぞ、中でお待ち下さい。」
私は部屋の中に入り襖を閉める。
―薄暗い
部屋には蝋燭の脚が四つ、みな蝋燭は熔け芯だけになっていた。部屋は八畳程の大きさで、中央には蒲団が一つ敷かれている。
そして、大きな窓が一つ。冬の月夜を映し出している。
―美しい
私は蒲団の前で正座をし、月夜を眺めることにした。
風と共に畳の伊草の香りが部屋中に立ち込める。