命が、減っている。
何となくゼルは察知
していた。
キアと、キアの手足と
なる者達と魂喰いを
探して幾日か経つが、
手掛かりらしいものも
ない。
月は、徐々にその欠けを
進めている。
輝きを少なくしていく
月を見上げて、キアは
「そろそろゼルに主導権交代かな」
とぼやいていた。
神の小間使いであるゼルとキアを以てしても、
魂喰いの痕跡は掴めない。
掴んだとしても、そこから得られる新たな情報がないのだ。
「八方塞がりだな」
結局、何も得られず、
ゼルは今日もレミーシュのねぐらへと戻る。
あれ以来、レミーシュも
混乱しているようで、
余り活発には動いてはいない。
何やらぼんやりと考え事をしている事が多い。
余り戦力としては見ていないので問題はないが。
「…あ。ゼル、お帰り…」
「あぁ」
「どうだった?」
「ダメだ。進展はない」
ゼルはけだるさを感じながらレミーシュと会話し、地下窓から地上を眺めた。
あれ以来、雨が少し強い日が続いている。
やはり、魂喰いが活動
していて、その罪を
流すか、消し去ろうと
しているのだろう。
でなければ、雨が強まる
理由などありはしないのだ。
ゼルは煙草に火をつける。
歯がゆい。
何者かも分からぬ者に、主が創った価値観や、
輪廻への冒涜を受けておいて、何も大してできずにいる自分自身が。
しかし、立ち止まってはいけない。
時を歪められても、
何人も、時を止める事は
できない。
その時の砂が落ちていく毎に、憎むべき存在は
力をつけ、
世界は破滅の断崖へと
向かっているのだ。
……世界の破滅?
何故、そんな事を
気にしているのだ…?
俺は世界を、救いたいのか?
……何故?
自嘲し、ゼルは煙草を
消し、窓から目を反らす。
…と。
レミーシュが立っていた。
一糸まとわぬ、
なまめかしくもあらわな
肢体が、鳩血色の瞳に
写し出された。