白鳥健吾は、その言葉に満面の笑みで応えた。
「さあ、どうする?」古賀が白鳥に尋ねる。
「そうですね。限りなく本気に近い遊びをしませんか」
「さすがだな」古賀は笑顔で返した。
「じゃあ、Eのコードで遊びませんか?」
「ブルースか?」
「はい」
二人には言葉はいらなかった。
古賀が弾き出した音に白鳥も絡んできた。
その絡みは見事なまでに融合していく。
白鳥の言った「限りなく本気に近い遊び」は言葉では表せないほどのものへとなっていった。
古賀がこんなに我を忘れてプレイするのは、ここ四年はなかったかもしれない。
それは、古賀がミュージシャンとしてのラストライブをあの九段下の一万人が入るハコの中でして以来だろう。