夕暮れ時の病室。
ミミのi-podから、リズム&ブルースが流れてくる。
窓に照らす太陽が、自分が沈んでしまうのを恐れるかのように、斜めから、長い光と影を作り出す。
コウは、ミミの手を両手で包むように握りしめている。
まるで、聖母マリアによりそう男のようだ。
二人の影が、白いシーツに浮かび上がる。
まるで僕とふたりの間には、越えることのできない厚い壁があるようだ。
ミミが潤んだ瞳で見つめる、そして、コウの熱い好きという想いが重なり合う。
僕はこのとき、無力を初めて知った。
二人は両思いなのだ。
どこかでそれを認めたくない自分がいた。
ずっと二人が結ばれてしまうのが怖かった。
でも、この好きという気持ちは、諦めきれない。
だが愛という名の恋愛感情はここで終わってしまう。
そんな気がする。
僕は、病室からそっと出た。
何かくさくさしていた。
この鬱憤を晴らしたくて、私服に着替えてから、街をぶらついた。
そのとき、見覚えのある女子高生のすがたが見えた。