木々達の囁き

mikko  2006-08-12投稿
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夏の、温かい風が頬にあたる。

それと一緒に、あの夏がよみがえる。

あの時は、あんなにも時間が短く感じたのに今では
一日が何年もかかっているように感じてしまう。

あの時には、あんなにもうるさく感じた蝉の声も、今では
嘘のように遠くに聞こえる。


まだ、「彼」が残っているような気がして、見渡してみた。


でも、そこにあったのは古びた滑り台と、二つのブランコと木々達だけだった。



私が今どんなに目を凝らして見ても、どんなに声を枯らして彼を呼んでも、
何も見えなかったし、何も聞こえなかった。


あの夏のある日、二人の身長を刻んだ木が風にのせて言った。




「彼は、死んだ。」



と。



小さく吹いた風が、二つのブランコを、
まるで誰かがのっているかのように…

小さく


揺らした。




                      つづく





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