ロストクロニクル9―6

五十嵐時  2009-12-03投稿
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「お前達!何者だ!」
さらに別の兵士に見つかってしまった。
「とにかく今は逃げるぞ!」
パットが叫んだ時
「逃がさないよ」
目の前に大量の桜の花びらの壁が現れた。
「なんだ!」
桜の花びらは四人を囲むように円を描いて回る。
「どうなってるんだ!」
花びらが一瞬で消えたかと思えば、オーケスの民家が立ち並ぶ郊外に飛ばされていた。
「・・・お前、何者だ」
四人の前には、顔を隠すように下を向いている色鮮やかな桃色の着物を身に纏った女性が立っていた。
髪は綺麗に結われており、清楚な雰囲気を漂わせていた。
「・・・」
女性は何も答えない。
「答えろ!」
女性はゆっくり顔を上げた。
薄く化粧をされた整った顔が現れた。
「私の名前は舞姫よろしくね」
元気な声で言うと腰にさしてあった脇差しを抜いた。
「チェロ・・・シャープと一緒に下がってろ」
チェロは適当な民家にシャープを連れて入った。
「お前は何者だ。見た所パラスの者じゃないようだが?」
パットが剣を抜きながら聞いた。
「ふふふ・・・やっぱりや〜めた」
舞姫は桜の中へ消えていった。
「消えた・・・」
パットは剣をしまった。
「おい、チェロ。出てきていいぞ」
チェロが恐る恐る扉を開けた。
「どうしたのですか?」
「さぁな、ビビって逃げた」
素っ気なく言った。
「とにかく、逃げて良かっな」
パットが気が抜けたのかまた意味のないバカ笑いを始めた。

「で、これからどうするんですか?」
シャープ達はこの辺りで一番広い空き家で夜を明かした。
どうやらチェロには堪えたらしく、首が痛むのか今朝からずっと首を気にしている。
「私に考えがあるのですが」
チェロは首に手を当てていた。
「何ですか?」
「ウェイトさんとタクトさんを呼び戻そうと」
「どうしてですか?」
「もう、私達に勝ち目はありません。ほんの僅かな最後の希望に懸けて、なんとか国王に木彫りの不死鳥の探索を許可して頂けたのですが、もう、駄目です。せめて最後に彼らに家族と過ごす時間を、と思いまして」
チェロは一通の便箋を用意していた。
「場所はわかるのか?」
「はい。この宝石が導いてくれます」
チェロは首にかけていた宝石と便箋を同時に空に投げ上げた。
便箋だけが消え、宝石はチェロの手の上に戻った。



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