結衣子の病は、重かった。
ただ、過剰なストレスを与えない限り、その症状は、軽くて済んだ。
だが、あまりにも、自分勝手な千鶴子の言い分と、ナイーブな親友が傷つくことの悲しみを思うと、輝かしい、地域の名門高校への進学が囁かれ、心ひそかに、そういった期待に添おうと日夜励んできた健気な少女には、耐え難い苦しみとなり、以前からあった脳腫瘍を刺激した。
毎月のMRIなど存在しなかった世界では、結衣子は、ただの体の弱い子に過ぎなかった。
千鶴子の母親としての有り様がいかにずさんであったかを見せつけるような事件であった。
千鶴子は、くだらないヒロイズムから、実子の健康を損なうに至った。
このような悲しい事態よりも、タイミングよく、恋人にふられた原因すべてが、結衣子のせいに思えて、無性に、結衣子が憎くなっていった。