desteny??

meeco  2009-12-03投稿
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「久し振りねぇ・・・。」

淳の母親は、目を細めて、私の顔をまじまじと見詰めながら言った。

「はい、お久し振りです。あの・・・、淳の容態は?」


「淳ね、もしかしたら、駄目かも知れ無いんだって・・・。さっき、先生に呼ばれてね。今晩が、ヤマかも知れ無いって・・・。内臓を酷く損傷してるって。」

淳の母親は、呟く様な声で、そう言い、遠くを見ていた。
「ヤマって・・・。そんな・・・。」

淳の母親の言葉を聞いて、私は、愕然とした―\r

「私も、さっき聞いたんだけどね、事故も淳らしいなって・・・。三歳の女の子が、道路の向こう側に転がって行った、小さいボールを取りに行こうとして、道を横切ろうと、走って来たらしいのよ・・・。危ないと思って、車を端に寄せて停めて、降りてって、その女の子に話しに行ったんだって、危ないよって。そしたらね、そのボールがとっても大事な物だって淳に話したらしいの、亡くなったパパに買って貰った、たった一つの宝物だって。そのボールが、逆車線の路肩に停まってた車の下に潜り込んでしまったみたいで・・・。」

「それで・・・?」

「それでね・・・、一生懸命、車の横に屈み込んで、その子と一緒にボールを探したんだって。その瞬間にね、その子のお母さんが、向こう側から、何してるの?って呼んだんだって。ママ〜って、道を横切って、ママの居る方へ走ってっちゃって・・・。ジクザク運転の大型トラックが突っ込んで来て・・・。」

「で、あっちゃんが、トラックに・・・?」

「ええ・・・。運転手は、ウトウトしてたみたい。女の子の方へトラックが突っ込んで来て、クラクションで、淳は気付いて、女の子を抱くようにして、タックルしようとしたんだけど・・・。」

ドラマや映画で、よく見る様な話だった。

「その女の子は・・・、助かったんですか・・・?」

「かすり傷で、済んだの・・・。私は、淳の母親だからね、淳がこんな事になって、辛いけど・・・。淳は、何も考えずに、小さいその子を守ろう!って、本能のまま、とっさに動いたと思うの・・・。こんな事、こう言う時に、言うの、変だと思うけど、私は、淳の事、誇りに思う・・・。後先、考えずに突っ走る所が、あの子らしいなって。」

淳の母親は、そう言い終えた時、涙をポロポロと流し、また、私と視線を合わさずに、遠くを見詰めたままだった。私は、何も言葉が出て来なかった―\r



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