「でね・・・、淳が、自分で香里ちゃんに話したいと思ってると思うけど、あの子、もう、もしかして、話せ無いかも知れ無いから、私が、話すけど・・・。」
淳の母親は、急に視線を私の目に戻し、話を続けた。
「はい・・・。」
「一昨日ね・・・、半年振りに、淳が家に、急に電話して来てね・・・。母さんに話が有るんだけど、って。で、帰って来たのよ、久し振りに。」
母親に聞いて、私は、ピンと来て居た。一昨日の夜、淳はいつもより、帰りが遅かった。私には、店で残業が有るから、帰りが遅くなると話して居た。
「改まって、何なの?って、茶化して聞いてみたら、あの子、急に、真剣な顔して・・・。香里ちゃんと、今、一緒に暮らしてて、結婚したいって。こんな事、話すの、おかしいけど・・・。敢えて、言うわね。全部、聞いたの、香里ちゃんの事・・・。」
全部―\r
どこまでの話か気になった。淳と母親は、異性だが、とても仲が良かった。隠し事を一切せず、お互いが、お互いの事を、尊重し、理解し合う、友達の様な家族だった。私は、それを知っていた。
「全部・・・、って言うのは?」
「辛かったわね・・・。身体の事・・・。誰にも言え無かったって・・・。淳がね・・・、香里ちゃんをこれから一生掛けて、守りたい!って言ったのよ・・・。あの子、ずっと香里ちゃんの事、好きだったの。自分が守ってやれ無かったから、そうなったって、自分を責めていて・・・。」
私は、涙が止まらなかった。
「あっちゃんは、何も悪く無いんです・・・、私が、もっと早く、話せて居たら、良かったんです。」
「なかなか、話せなかったのよね?私も、香里ちゃんと同じ、女性だから、解るのよ。あと・・・、淳は、数日かも知れない、今晩で、あの子は、駄目になるかも知れない・・・。」
「そんな事・・・、言わないで下さい!!」
「私も、そう思いたいけど・・・、でもね、先生のお話だと長く無いって・・・。だから・・・、私やお父さんが付いてるよりも、香里ちゃんが少しでも、居てくれた方が、淳も喜ぶと思うの・・・。もしも、後、少ししか時間が無いんなら、今までの分、一緒に・・・、淳と居てやって・・・。私からのお願い・・・。お願いします。」
淳の母親は、膝に頭を擦り付ける様にして、私に懇願した。
「でも・・・、私が居ても、良いのかなって・・・。」
「淳が、望んでる事をしてあげるのが、親だから・・・。私達の子供は、淳だけだから・・・、ね・・・。」
私の肩を抱き締め、その後、何も話さずに、淳の母親は、病院を去って行った―