(わー、人がいっぱい)
白い建物で囲まれた道をレンは一人、大きな紙袋を抱えて歩いていた。
置いていかれたミリーは今頃泣いているだろう。
あちらこちらの建物に宿屋、パン屋、武器屋等の看板がかけられ、窓ガラスから中の様子が見え、すれ違う人々は皆楽しそうに歩いていく。
レンは久々に晴れやかな気分で足を進めていた。
すると、遠くの方で叫び声があがった。
(何?!)
向こうから人々が逃げるようにこちらに向かって走ってくる。
レンは立ち止まったままその“何か”を目を凝らし待った。
(あれはっ!?)
全身を黒色で身を包んだ怪しい仮面の男達。
あのアバドンの一味だ。
彼らはものすごいスピードでこちらに向かってくる。
レンは何もできず棒立ちの状態で動けなかった。
そして彼らは腕を振り上げレンに襲いかかった。
レンは目を瞑った。
バッ
「…そんなでかい袋抱えてたら逃げらんないよ?」
その声に目を開けると目の前には黒い帽子を被った男がアバドンの攻撃を素手で押さえている。
「まったく…なんだよ、こいつら。
世界ってのはこんなに変な奴らがいんのか」
男はぶつぶつ文句を言いながら空いてる方の手で敵の腹を突いた。