――だからあたしは悲しいのです。
今、涙の理由がはっきりとわかりました。
世界を否定したくなるその理由が。
あなたは傷を逃れるためにたくさん嘘をつきました。
興味のないことにも興味を示したりして。
楽しくないのに笑ったりして。
文句を言ったり愚痴ったりして。
冷めた目をしてみたりして。
あたしにはいつも優しくしてくれたあなた。
そんなあなたが大好きでした。
あなたが傷を持っていることも知らずに。
あたしはへらへらと笑っていました。
そんな自分が嫌いでした。
気づいてしまってからはずっと。
あなたはあたしを見てくれません。
たくさんいる内の一人。
ただそれだけ。
あなたはあることに夢中になっています。
あたしは止める術を知りません。
ただそれがとても不健康だということはわかっています。
それに夢中になるあなたがあたしは少しだけ嫌いです。
あたしを見ているようで実はちっとも見てくれていないあなたが少しだけ嫌いです。
世界がもう少しだけあなたに優しければいいのに。
よかったのに。
そうすればあなたはそんなものに夢中にならずにすんだのに。
あたしとあなたはもう少し真っ直ぐ向き合えたのに。
だからあたしは悲しいのです。
世界とあなた、どちらも愛しているから。
涙は止まりません。
優しい指先を求めています。
できればそれが正気に戻ったあなたのものであればいいと願っています。