結衣子は、自分を、強くなったなあ…と思う。
病を持つ体らしき煩わしさと付き合い出して40年以上の歳月が流れた。
失ったものも多い。
大病を患っているからといって、親に甘えることが出来たわけではない。
病と家族の内の二人という「大勢」との戦いのある自宅は、結衣子にとって何一つ、心が安らぐ処ではなかった。
それでも、長年続いてきた家の末裔である重みが、結衣子に、人でなしの母親と妹との完全な別居を踏みとどめた。
その義務づけは、幼少時より、通常の親が参加すべき、親族の冠婚葬祭の場で自覚を重ねて身につけた。