知ってるよ。?

やまだ  2006-08-12投稿
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知ってるよ。

あなたの掌の行き先。

でも、あなた知らないでしょ。
あたしの掌の行き先は、あなたなんだよ。


――…?…――


頭がボーッとするまで涙を流しているうちに、すっかり外は暗くなっていた。


『…真っ暗…。』
『俺見たい再放送あったのに。』

ゆうたが文句を言っている。


『じゃぁ帰ればよかったのに。』
『帰れるかよ。』


ゆうたは真剣な顔をする。


『なんでいつもあたしなんかに…』


言いかけた瞬間に、誰かが隣の教室のドアを開けた。


『…誰だろ…こんな時間に…』
『もう野球部くらいしか残ってねーぞ。』



野球部…鈴木くん…?



『…行ってくれば。鈴木かもしんないし。』
『や、やだよ!』
『良いから行けッ!俺は帰りたいの!』



ゆうたはポイッとあたしを投げ捨てて、教室を出ていってしまった。



『…ひとでなし!』



言いながらあたしは立ち上がって、ゆっくりと隣の教室のドアの前まで進んだ。


『…誰なんだろ…』


ドアに手を伸ばした瞬間、聞き覚えのある声がした。


『…ッ…ヤス君のばかッ…ばかッ…』



泉…先輩…?

泉先輩の押し殺した泣き声が、教室に響いている。

先輩…ヤス先輩とケンカでもしたのかな…


どうしよう。
ここはなぐさめるべきなの?


迷ってるうちに、廊下から誰かが走ってきた。


『えっ!どうしよう!』



あたしは、やっぱり隠れる必要もないのに、廊下の死角にサッと隠れた。


足音は泉先輩のいる教室まで入っていって、ピタリと止んだ。

『…だ、誰が入ったの…?』


ゆっくりと教室に近寄った途端に声がした。



『ヨシ…?なんで…練習は…?』



ヨシって…鈴木くん…?


『…ヤス先輩、謝ってましたよ。』


なに?なんの話ししてるの?


『…なんでッ…ヤス君…甲子園なんか行けるわけないなんて言ったの…!?』
『ヤス先輩も、プレッシャーとか…あるんですよ。きっと。』
『連れてってくれるって約束したのに!約束したのにッ…!』

泣き叫ぶ泉先輩の声は教室中に響いた。



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