僕は幽霊。誰かに殺された。
実は、殺された時のショックでほとんどの記憶をなくしてしまった。
だから、僕を殺した憎き犯人を見つけないと、どうしても気になって、呑気に成仏もできないのだ。
僕が自殺したとも考えられるが、それはないと確信している。
そんな自分を自分で殺すような愚かな人間ではなかったような、という漠然とした記憶は残っているからだ。
何かの事故で死んだ可能性もあるが、僕はそんな間抜けで、不注意な男ではなかったはずなのだ。
よって、僕は僕以外の誰かに殺されたことになる。
犯人を見つけたら、呪い殺してやろうか……。
最近の僕の目つきは、凶悪な殺人鬼の恐ろしいそれと似ている。
暗く狭い路地裏を何となく歩いていると、一人の男が壁に寄りかかって座っていた。
影の薄さから、彼が僕と同じ幽霊だと分かる。
どこかで見たことがあるような…。
そう思いながら彼に声をかけてみた。
「すみません」
「はい、なんでしょう……………あ!お前は!」
「あなたも僕に見覚えが?ということはやはり」
「お前はあの時の!」
「やはり、僕を殺したのはあなたですね」
「何を馬鹿な!それはこっちのセリフだ!はっきり覚えているんだ!俺を殺したのは、お前だろ!やっと見つけたぞ」
「僕は殺された身ですよ。人殺しなんて…」
「お前が忘れているだけだ!許さないぞ!この、殺人鬼め!」
「だから、僕は」
僕の言葉を遮って、彼は大きな声で言い放った。
「どうせお前は、人を殺した罪で、死刑になったに違いない!」