子供のセカイ。114

アンヌ  2009-12-08投稿
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その時、ようやく何か思いついたのか、耕太はパン、と両手を打ち鳴らした。
「よし、これっきゃねぇ!」
それから、ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、と、自分、美香、ジーナ、王子の肩に手を触れると、同時に先頭を切って広場から街の方へと駆け出した。
「ちょっ、耕太!?」
「いいからついて来いって。もうオレたちの姿は誰にも見えねぇからさっ!」
ジーナが怪訝そうに眉を寄せた時、またしても、
「ホーウ!イェアー!ヘーイ!」
の掛け声が遠く後ろの方から聞こえてきた。明らかに広場を目指している。広場にいる誰かが、こっそり通報したのかもしれない。
ジーナは「くっ!」と唸って、走り出した三人の後を追いかけながら耕太に向かって叫んだ。
「どういうことだ、耕太!このまま走っていては上空からは丸見えだぞ!できるだけ走らず、どこかに身を潜めることが肝心――」
「師匠、周りをよく見てくださいよ!もう誰もオレたちが見えちゃいない。さっき想像の力で全員の体が周りの奴からは透明に見えるようにしたんだ。」
言われてみれば、さっきまでこちらを見てひそひそと話をしたり指を差したりしていた人々は、目を丸くして、驚きの声を上げている。その全員が相変わらずさっき四人がいた辺り――運悪くジーナに気絶させられた女性が倒れている辺りを、呆然と見つめている。「どこへ消えた!?」「今さっきまでちゃんとそこに……!」などと言う声が飛び交っており、ぽかんとしてその様子を見ている美香の顔の前に、耕太は走りながらブイサインを突きつけた。
「オレもやればできるだろ?」
「え、ええ……すごいわね。」
素直に誉められたことが嬉しかったのか、耕太は上機嫌になってますますスピードを上げた。広場から延びるいくつかの道の内の一本を選び、建ち並ぶ背の高い家々を横目にしながら、四人は一列に走った。後ろから、「消えただとぉ!?治安部隊をナメてんのかてめェら!」と、先ほどの治安部隊を率いていた先頭の若者の、よく通る怒鳴り声が聞こえたが、美香たちは構わずに走り続けた。
しばらく走った美香たちは、気づけば入り組んだごみごみした下町の中に来ていた。美香と王子が限界を訴えて道端に座り込んだ時、遥か後方から、また、「ホーウ!イェアー!ヘーイ!」の掛け声が聞こえてきて、四人はぎょっとなった。

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