翔ちゃんの話から思い出話にとんで、ちょうど話が区切りにきたときやった
「あーやべえっ!!!」
和が立ち上がって叫んだ。
「俺もう帰るわあ」
驚いたままのあたしに振り返って和は一言そう言った。
また会える?
その言葉が出てこーへん。
「真央、携帯貸して」
和が突然手を差し出したので、あたしも慌てて青色の携帯を差し出した。
高1の春、やっと手に入れた携帯。あーあ、もっと早くに持ってればなあって何度思ったやろ。
そんなあたしの気持ちをよそに和はあたしに背を向けてなにやら作業を始めた。
「何ー?」
あたしが覗き込むと和が振り返った。
「じゃあ〜ん」
ギターのストラップがついたあたしの携帯に、小さな女の子のキーホルダーが増えていた。
「何これ?」
和っぽくない
なのに和は
「俺の」
と得意気に笑いながら携帯を返した。
「今度会ったら返せよ」
「え…?」
「赤外線はもうすんだから」
にやにやしながら和は自分の携帯を見せた。
あたしは慌てて自分の携帯を開いてみた。
“成瀬和樹”
「またメールする。
この公園で待ち合わせな」
小さなキーホルダーがかわいく揺れた。