汝、右の頬打たらば

真理康子  2009-12-10投稿
閲覧数[703] 良い投票[0] 悪い投票[0]

幼稚園に入るまで、自分は、普通の子どもだと思っていた。

ただ、祖父母や叔母も多くいて、にぎやかな家庭であるとは感じていた。

後からわかったことだが、戦時中に騙されて一切の財産をなくした母型の親族を、父が引き取り、同居していたまでで、裕福な多世帯住宅というわけではなかった。

叔母たちは、私の家から嫁に行き、さながら、年の離れた姉が数名いるような環境だった。

家事は、叔母や祖父が率先して担ってくれた。

というのも、母型の五人の姉妹のうち、母を含む、上から三人の姉妹は、家事をせずに大人になれる裕福な育ち方をしていたので、厨房に入ることをいみきらった。

それでも、太平洋戦争の中、それぞれ、各地の「殿様」と呼ばれる家に嫁いだ伯母たちは、舅、姑によく仕え、土地の守るべき民のために身を粉にして働いた。

もちろん、台所仕事にもせいをだした。二人とも、ふくよかな少女時代とは、打って変わって、ずいぶん小柄な体格へと変わっていった。

私には、そういう伯母が、机に飾ったマリア像とだぶって、たいへん誇らしかった。

祖父が私の家にいた理由は、そんな伯母たちのように社会情勢に馴染まず、いつまでたっても、厨房に

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 真理康子 」さんの小説

もっと見る

公募投稿作品の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ