彼女はこの三年間、弟を殺した男を追い続けていた。
そしてついに弟の憎きカタキを、この廃工場の中の、行き止まりまで追い詰めた。
彼女の手に握られた銃の前に、弟のカタキはなすすべもなく、恐怖に顔をひきつらせていた。
もう、逃げ道はない。
しかし、人間の本性とは恐ろしい物である。
彼女は、この緊迫した場面でさえ、その持って生まれたそそっかしさを発揮してしまったのだ。
彼女…フグ田サザエは、弟のカタキに向かって、こう叫んで銃の引き金を引いてしまった。
「カツオのタタキ!」