王子は耕太に目を向けながら言った。
「さっき治安部隊がしつこく僕らの跡をつけてきただろ。姿が見えないにも関わらず。昔ちらっと聞いた話では、彼らは想像物の痕跡を追えるらしいんだ。たぶん僕とジーナがいる限り、君たちは治安部隊から逃げ切れないよ。」
「でも、そんなことしたら王子たちがつかまっちゃうわ!」
思わず美香が声を高くすると、ジーナは挑発的な笑みを浮かべた。
「なるほどな……。わざとか?」
「え?」
眉を寄せた美香に、王子は珍しくジーナと同じようにニヤリとした笑みを見せた。
「うん。僕とジーナが治安部隊に捕まったら、恐らくコルニア城じゃなくて強制労働施設の方に連れていかれると思うんだ。美香ちゃんがコルニア城の舞子を目指していることは重々承知のはずだし、せっかく二手に分かれた僕らをわざわざ結束させるような事態は避けたいはずだからね。」
「そんで師匠たちは『知り合い』さんを助けて、オレたちに合流するってことか?」
「まぁ、そうなるだろうな。余裕があれば強制労働施設で騒ぎでも起こして、覇王の企みをぶっ潰すというのもおもしろいが。」
悪人のような顔で笑うジーナを、三人は畏怖の眼差しで見ていた。
しかし、美香には一つ気になることがあった。
「でも、結局コルニア城の場所は聞けなかったわ。闇雲に歩いても迷子になるだけだし、それに、ジーナたちとはどこで合流すればいいの?」
「それならいい案がある。」
耕太は自分の思いつきを話し始めた。皆が納得した後、美香は耕太に忠告した。
「でも、忘れないで。想像の力を使えるのは五回が限度なのよ。休憩すればまた使えるようになるけど、戦いの最中に使いきったらおしまいよ。六度目には気を失っちゃうんだから。」
「わかったよ。」
計画は決まった。四人は互いに目配せして決意を確認し合うと、輪の真ん中で手を重ねた。誰が言い出したことでもなく、自然な流れでした動きだった。
皆、考えていることは同じだった。これは遊びではない。舞子を取り戻す、ただその目的のためだけにここまで旅を続け、ついにその最終地点にやって来た。ここにいる全員の働きに、すべてが懸かっている。
「美香ちゃん、何か言うことはない?」
いつものように優しく微笑んだ王子に促され、美香は真剣な顔で三人を見渡した。