子どもは家を選べない〜その13〜

真理康子  2009-12-14投稿
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結衣子は、自分の容姿のいたらなさを自覚して、教養を身につけることで自らを補おうと努力した、ロシアのエカテリーナ二世にちなんで、よく読書をした。

中でも、哲学書やガンジーの思想などを読むようにしていた。
ガンジーの無抵抗主義には、若い頃、ずいぶん共鳴した。

いかなる被害にあおうとも、自らは凛として立ち向かえるようでありたいと思った。

良いと思うことには、片っ端からチャレンジした。

許されざる行為をしてくる母親や妹には、それなりの天誅が来る事とし、そんな輩に息子が取り込まれないようにだけは闘いたいと考えてみた。

息子の翔の曖昧さに、残念な思いは隠せなかった。

注意したり、心ある、翔の学校時代の恩師が歩みよると、母親を陥れて自分を味方にしようとする祖母や叔母になびいた。

子どもの育つ環境というものは恐ろしい。

親族や恩師にとがめられようものなら、祖母達の言いなりを選び兼ねないだけに、周囲は、翔の扱いに苦悩した。

そんな子どもではないはずだった。

結衣子は、曲がりなりにも、離縁せずに、見かけだけの家庭を演じたとしたら、翔は、このようにはならなかったのではないかと思う。

プライドの高い翔にとって、片親で育てられたことは、耐え難い苦悩があっただろうと思う。
今なお、学校で、父親参観日になると、登校拒否をおこす子どもが後をたたない。

両親の愛を喜ぶ子どもにとっては、嬉しくて仕方のない時間を 、そうでない子どもに照準する事も望ましいことではない。

結衣子は、精一杯、翔の母親を頑張り抜くしかないと自分に言い聞かせていた。



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