子供のセカイ。119

アンヌ  2009-12-16投稿
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「ここまで私のために――舞子のために、一緒に来てくれてありがとう。今まで危険な旅をしてきて、こんなことを言うのも今更なんだけど、みんな絶対に無茶はしないで。自分の命を最優先にして。」
三人とも、反論せずに頷いた。あえて口には出さなかったが、誰よりも無茶をする可能性の高い美香をまず守らなければいけないというのは、王子もジーナも耕太も、それぞれに感じていることだった。
それから四人は立ち上がり、最後に軽く言葉を掛け合うと、行動を開始した――。



治安部隊のリーダーであるハントは、苛ついていた。
さっきまで快調なペースで続いていた捜索が滞ったのは、奴らが家の中に入ってしまったからに他ならない。
「木ぃ隠すんなら森ン中、か。」
呟いたハントは、はん、と鼻先で笑い飛ばした。奴らもただの馬鹿じゃないってことか。
治安部隊は想像物の痕跡をかぎ分ける優秀な鼻を持っている。しかし家の中には密度の濃い想像物が存在するため、その色合いに押されて特質がかぎ分けにくくなるのだ。
ガキが三人に大人の女が一人じゃ、大したことはできないだろうとナメていた。しかし、内二人は光の子供だというのも、相当やっかいだった。ハントは光の子供が苦手だ。においがわからないというだけでなく、どんな行動に出るのかまったく予想がつかないからだ。
「さぁーて、どうすっかねぇ?」
櫛を通さないボサボサの髪をかきながら、ハントはため息をついた。ハントは今、背の高い家の屋根に腰掛け、短いズボンからぬっと突き出ている筋肉の引き締まった二本の足を、ぶらぶらと宙に浮かせている。上半身も布をぐるりと巻きつけただけの格好で、日に焼けた逞しい肌がむき出しになっていて、良くも悪くも目に痛かった。ハントの友達、兼部下である若者たちも、同じように原始的なスタイルの服を着ている。彼らは今、地道に下町の家を一軒一軒捜索中で、ここにはいない。
「うあーぁ……。」
間の抜けた声を上げると、ハントはぐうっと体を伸ばして、そのまま屋根の上に背中を倒した。
雲一つない青い空を見つめる。――見つめたまま、ぽつりと何気なく呟いた。
「……自由になりてぇなぁ……。」
誰にともなく呟いた声は、青い空に溶けていった。ハントは目を閉じ、昼寝でもしようと頭の下で手を組んだ。

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